「お客様と不倫」のハレンチ男をどう罰するべきか

旅行先で携帯が壊れました。
露木行政書士事務所・露木幸彦と申します。


突然、電源が入らなくなったのです。どうやら、電池の故障らしいです。
携帯を時計代わりに使っているため、時間が分からないのは致命的です。
駅の時計をこんなに必死に探したのは初めてですね(苦笑)





さて前回までは社内不倫が会社に迷惑をかけてしまう事例を挙げてきました。
今回はその続きからです。



■ 営業マンと専業主婦が恋に堕ちやすいメカニズム


最後に顧客です。
どんな会社にも一定数の顧客が付いていますが、社員と顧客が一歩、道を踏み外して
不倫関係に発展するケースがあります。


特に営業職の男性社員(既婚)に多く、
訪問販売の最中、訪問先の女性とアバンチュールをしてしまうのです。


その男性社員がどんな人間かはさて置き、少なくとも自社の商品やサービス、
業界の情報に関しては相当に詳しいので、
顧客である女性が尊敬に眼差しで見てしまいます。


そのような上下関係があると、簡単に口説けるというわけ。



ただ、大事なのは、社員の顧客は不倫女性ただ1人ではないということです。


実際には何人、何十人といるわけですが、
他の顧客だって、自分のことは
平等に、もしくは他の人より優しく接して欲しいと思っています。
その嫉妬心が禍をもたらします。






例えば、社員が女性と街中でデートをしていたり、
ファミレスで食事をしていたり、
ショッピングセンターで買い物をしていたり。



その現場を他の顧客に見られたとします。



しかも厄介なのは、社員は決められた範囲の地域を担当していますが、
不倫相手の顧客と、目撃した顧客は面識があることも多い。


子供が同じ学校に通っている「ママ友」だったり、近くに住んでいる
「ご近所さん」だったり。


女性同士のコミュニティでは、あっと言う間に噂が伝わっていくので、
困ったものです。「なんで○○ちゃんママだけ特別扱いなの!もう許せない!!」



他の何人、何十人という顧客が、嫉妬心を爆発させ、
不倫の事実を会社に通報することが予想されます。


このようなシチュエーションでは、顧客だって不祥事の通報者になり得るのです。






■ 被害者を倍増させる社内処分のダブルスタンダードとは?



このように社内不倫という不祥事を社員以外、
例えば、不倫をした社員の妻、取引先、顧客が会社に密告してきた場合、
公益通報者保護法の対象にならないのです。



ここで言う「法律の対象にならない」とはどういう意味なのでしょうか?
これはかなり致命的な欠陥なのです。



前述のように公益通報者保護法は内部告発をした
「社員」への「不利益処分」を禁止する法律です。


これ以外に禁止している行為はありません。




保護の対象を「社員」に限っているのは、
会社が社員以外の人間に不利益処分を科すことができないからです。



不利益処分とは解雇や減給、降格や左遷などですが、
社員が会社と雇用契約を結んでいるから(もちろん、処分の根拠は必要ですが)
会社は社員にこれらの処分をすることができ、社員は文句を言えないのです。





一方で社員の妻、取引先、顧客は、会社に
勤めているわけではないので、
会社にそのような処分をされる謂れはありません。



もちろん、会社もそれらの人たちを処分することはできません。
「そもそも処分する権限がないから、保護する必要がない」というのが、
この法律のスタンスです。

しかし、実際のところ、どうでしょうか?


内部告発に関する法律は、公益通報者保護法だけです。


だから、会社が「社員」に「不利益処分」をするかどうか、
それ以外の場面でも、
この法律にスタンスは知らず知らずのうちに応用されるのです。



どうせ僕は社員じゃないから、内部告発しても処分されないから大丈夫・・・
などと甘っちょろいことを考えていたら、
痛い目に遭います。そんな低次元の話ではないのです。



では「社員への不利益処分」以外の場面とは、
具体的にどのようなシチュエーションなのでしょうか?


それは会社が内部告発に対し、どう対処するのか、です。


具体的には通報の内容を吟味し、社内で調査をし、
該当者を処分し、再発防止策を講じるのか、
それとも「無理したり、断るのか」です。



もし、この法律を内部告発への「行動基準」にそのまま、
当てはめるとしたら、これは大変なことです。




まず通報者ですが、社員以外の人間からの通報は
「無視しても良い、断っても構わない」ということになります。



しかも、この法律や無視や門前払いに対して
「お墨付き」を与えているのです。



これは通報の中身も同様です。
通報の内容が、民法で規定されている不倫やいじめ、
セクハラやパワハラ、ストーカーや嫌がらせなど、だった場合会社は
「無視しても良い、断っても構わない」ということになります。



しかも、「法律に書いていないから、いいでしょ!」と
開き直る根拠を与えてしまっているのです。



もちろん、この法律を会社の行動基準に応用するのが良いのか
どうかという問題はあるでしょう。



しかし、社員の妻、取引先、顧客が社内不倫について会社に相談し、
会社が「○○という法律があって社員以外からの通報は受け付けられないんですよ」
と切り返されたら、どうでしょうか?







気持ち的には納得いかないでしょうが、初めて目にする法律にプレッシャーを感じ、
「そんな法律があるなんて知らなかった。



じゃぁ、せっかく通報しても、会社は味方になってくれない」と
絶望するでしょう。



そうやって「不倫相手にぞっこんで夫が家に帰ってこない」と嘆く社員の妻も
「取引先と不倫をしているせいで、不利な条件をのまされている」と
困っている取引元の担当者も「近所の奥さんと不倫しているから、



営業さんが約束に時間に来ない」と頭にきている顧客も怒りをぶつける相手も、
愚痴をこぼす相手も、おかしな状況を正常化してくれる相手もなく、
ただただ涙を流すしかないのです。




「不祥事はやった者勝ち」という理不尽な壁の前では。




(次回に続く)